2023年01月07日
Posted by ごま at
2023年01月07日08:38 Comment(0)
最近読んだ本まとめて
こないだ会った友達は小学校の図書室に勤めています。
いろいろ話を聞かせてもらいました。
採用試験はブックトーク(一定時間に本の紹介をすること)で、動画で勉強したり、私設図書館に行って教えてもらったそうです。
本に関する仕事、いいなあ楽しそうだなあと思いながら聞いていました。
私もたまに本の感想文を書くけど、めちゃめちゃ難しくて時間がかかる、の割に需要がない(笑)という話をしました。
最近というか、去年後半に読んだ本

生皮 あるセクシャルハラスメントの光景
井上荒野
動物病院の看護師・咲歩は、小説講座の人気講師・月島光一から才能の萌芽を認められ、教室内で特別扱いされていた。しかし月島による咲歩への執着はエスカレートし、肉体関係を迫るほどにまで歪んでいく。
被害者、加害者、その家族、受講者たち、かつての受講生で同じようにセクハラを受けた売れっ子作家、それぞれの捉え方が描かれていて、面白いと言っては何だけど面白かった。
断り切れない状況で受け入れてしまったことを、同意の上と主張する講師の勘違いと思いあがり。
その先何年も自己嫌悪とトラウマに陥る被害者がただただ気の毒。
その心理描写が的確で主人公に感情移入した。
最近でこそ、演劇界などで勇気ある告発が増えたけど、社会的制裁を徹底的にやってほしいし、罰が当たればいい思う。でも加害者の家族は被害者。自分のしていることで、家族がどんな思いをするかに思いが及ばない男はただただアホである。

ある男 平野啓一郎
事故で死んだ夫が、全くの別人だと判明。
夫は過去を取り替えていた。
「過去は変えられないと思っているけど、未来によって過去は常に変化している。それくらい過去は繊細で感じやすいもの。(マチネの終わりに)」
『マチネの終わりに』(めちゃ好き)と『ある男』
どちらも過去がキーワードになっている対のような作品だと思った。
愛にとって過去とは何か?
愛に過去は必要なのだろうか?
マチネを読んだ時にも思ったけど、過去って形がないので、今の自分の取りようというか、脳内取捨選択していいことばかりの人もいれば逆もあるし、さらにそれを人に語るとなると脚色されたり都合の悪いことは隠したり。学歴職歴犯罪歴あたりも調べないとわからないし、戸籍も取り替えていたらわからない。過去というものに、果たして実体はあるのかと考えてしまった。
在日問題や死刑廃止論争を織り込んだ読み応えのあるミステリー。
過去を取り替えないと生きていけない事情に胸が傷んだ。
それでも過去を偽って得た数年間の幸せに救われたような気持ちに。家族でお気に入りの桜の木を選ぶエピソードが心に残った。

傲慢と善良(個人的2022ベスト1)がよかったのでもう一冊
朝が来る 辻村深月
不妊治療の末、民間団体の養子縁組で男の子を授かった夫婦。朝が来たような気持ちから朝斗と名づけた男の子と平穏な日々を過ごしていたある日、夫妻のもとに「息子を返してほしい」という電話が。
自分たちの子供を産めずに、特別養子縁組という手段を選んだ夫婦。
中学生で妊娠し、断腸の思いで子供を手放すことになった幼い母。
この二者の対比。
まさに大人と子供。
人間的によくできた(私から見ると完璧)夫婦、あまりにも幼稚で無知で、そのためにどんどん転落していく産みの母ひかり。
子どもって、親にとっては突かれると一番弱いところ。だから子どもを巡るあれやこれやって精神的に一番きつい。プロローグの、友達に怪我をさせたエピソードは本編とは関係のないことだけど、こんなことがあったら相当しんどいな、自分ならどうするだろう?から入って一気に本編へ。ラストは救いがあって、一筋の光が見えたような気がした。

親愛なる向田邦子さま
森繁久弥、倉本聰、久世光彦、山田太一、沢木耕太郎、加藤治子、黒柳徹子・・・
友人や仕事仲間26人が綴る「向田邦子」
向田邦子さんの人を見る目の鋭さは、ドラマを見るたび、本を読むたびビシバシ刺さる。
先日、『阿修羅のごとく』がNHKオンデマンド見られるようになり早速見始めたけど、姉妹の会話があまりにリアルでなんだか息苦しくなり中断中。
この本で読みたかったのは、亡くなった日のことや、仕事や作品の凄さではなく、人柄が見えるちょっとしたエピソード。遠藤周作さんが紹介した小料理屋を気に入って密かに通っていたという話がなぜか一番心に残った。おいしい物好きの向田さんらしいエピソード。
平野さんと辻村さんは年始にもう一作品読みました。
平野さん作品はいつも社会と自分についてうーんと考えさせられるし、辻村さんは否が応でも我が身を振り返させられぐさぐさ刺さる。
いろいろ話を聞かせてもらいました。
採用試験はブックトーク(一定時間に本の紹介をすること)で、動画で勉強したり、私設図書館に行って教えてもらったそうです。
本に関する仕事、いいなあ楽しそうだなあと思いながら聞いていました。
私もたまに本の感想文を書くけど、めちゃめちゃ難しくて時間がかかる、の割に需要がない(笑)という話をしました。
最近というか、去年後半に読んだ本
生皮 あるセクシャルハラスメントの光景
井上荒野
動物病院の看護師・咲歩は、小説講座の人気講師・月島光一から才能の萌芽を認められ、教室内で特別扱いされていた。しかし月島による咲歩への執着はエスカレートし、肉体関係を迫るほどにまで歪んでいく。
被害者、加害者、その家族、受講者たち、かつての受講生で同じようにセクハラを受けた売れっ子作家、それぞれの捉え方が描かれていて、面白いと言っては何だけど面白かった。
断り切れない状況で受け入れてしまったことを、同意の上と主張する講師の勘違いと思いあがり。
その先何年も自己嫌悪とトラウマに陥る被害者がただただ気の毒。
その心理描写が的確で主人公に感情移入した。
最近でこそ、演劇界などで勇気ある告発が増えたけど、社会的制裁を徹底的にやってほしいし、罰が当たればいい思う。でも加害者の家族は被害者。自分のしていることで、家族がどんな思いをするかに思いが及ばない男はただただアホである。
ある男 平野啓一郎
事故で死んだ夫が、全くの別人だと判明。
夫は過去を取り替えていた。
「過去は変えられないと思っているけど、未来によって過去は常に変化している。それくらい過去は繊細で感じやすいもの。(マチネの終わりに)」
『マチネの終わりに』(めちゃ好き)と『ある男』
どちらも過去がキーワードになっている対のような作品だと思った。
愛にとって過去とは何か?
愛に過去は必要なのだろうか?
マチネを読んだ時にも思ったけど、過去って形がないので、今の自分の取りようというか、脳内取捨選択していいことばかりの人もいれば逆もあるし、さらにそれを人に語るとなると脚色されたり都合の悪いことは隠したり。学歴職歴犯罪歴あたりも調べないとわからないし、戸籍も取り替えていたらわからない。過去というものに、果たして実体はあるのかと考えてしまった。
在日問題や死刑廃止論争を織り込んだ読み応えのあるミステリー。
過去を取り替えないと生きていけない事情に胸が傷んだ。
それでも過去を偽って得た数年間の幸せに救われたような気持ちに。家族でお気に入りの桜の木を選ぶエピソードが心に残った。
傲慢と善良(個人的2022ベスト1)がよかったのでもう一冊
朝が来る 辻村深月
不妊治療の末、民間団体の養子縁組で男の子を授かった夫婦。朝が来たような気持ちから朝斗と名づけた男の子と平穏な日々を過ごしていたある日、夫妻のもとに「息子を返してほしい」という電話が。
自分たちの子供を産めずに、特別養子縁組という手段を選んだ夫婦。
中学生で妊娠し、断腸の思いで子供を手放すことになった幼い母。
この二者の対比。
まさに大人と子供。
人間的によくできた(私から見ると完璧)夫婦、あまりにも幼稚で無知で、そのためにどんどん転落していく産みの母ひかり。
子どもって、親にとっては突かれると一番弱いところ。だから子どもを巡るあれやこれやって精神的に一番きつい。プロローグの、友達に怪我をさせたエピソードは本編とは関係のないことだけど、こんなことがあったら相当しんどいな、自分ならどうするだろう?から入って一気に本編へ。ラストは救いがあって、一筋の光が見えたような気がした。
親愛なる向田邦子さま
森繁久弥、倉本聰、久世光彦、山田太一、沢木耕太郎、加藤治子、黒柳徹子・・・
友人や仕事仲間26人が綴る「向田邦子」
向田邦子さんの人を見る目の鋭さは、ドラマを見るたび、本を読むたびビシバシ刺さる。
先日、『阿修羅のごとく』がNHKオンデマンド見られるようになり早速見始めたけど、姉妹の会話があまりにリアルでなんだか息苦しくなり中断中。
この本で読みたかったのは、亡くなった日のことや、仕事や作品の凄さではなく、人柄が見えるちょっとしたエピソード。遠藤周作さんが紹介した小料理屋を気に入って密かに通っていたという話がなぜか一番心に残った。おいしい物好きの向田さんらしいエピソード。
平野さんと辻村さんは年始にもう一作品読みました。
平野さん作品はいつも社会と自分についてうーんと考えさせられるし、辻村さんは否が応でも我が身を振り返させられぐさぐさ刺さる。